預金保証制度
2010年の9月10日。日本振興銀行株式会社が東京地方裁判所に民事再生法を申請して経営破綻した日です。同年の7月に検査妨害の疑いで元役員が逮捕されるなど悪風評がきっかけとなり定期預金の引き出しが続き資産状況が悪化したのです。これに伴い、政府と預金保険機構は預金保険法にもとづいて預金の払い戻し保証金額を元本1000万円とその利子までとする定額保護、いわゆる「ペイオフ」を発動しました。
しかし、振興銀行はこのペイオフを意識した預金の募集をしていたため該当者は3560人で100億円程度、預金者全体の約3%に留まりました。当局ではこの預金募集がモラル違反ではないかと問題視していたが、やはり一方で老後のマンション購入にと4000万円以上を預金した顧客も存在していました。
このペイオフは政府、日本銀行、民間の金融機関が出資した「預金保険機構」が主体となって運営しています。この制度によって定期性預金をしている金融機関などが破綻しても、1金融機関につき1預金者あたり元本1000万円とその利子が保証されるのです。しかし、前出の老後のマンション購入資金などの高額預金は基本的には満額保証は期待できないのです。破綻した金融機関の資産状況に応じた支払いになりますので、リスクを回避するためには1000万円を上限として数行に預け入れるなどの対策も必要なのです。
では、ネットバンクはそのペイオフの適用を受けることが出来るのか気になるところですが、大丈夫です。ネットバンクには窓口担当者もいなければ支店という店舗も存在しませんが、預金保険機構に加入しているので適用されるのです。しかし、預金にも種類と方式が存在します。
例えば普通預金と定期預金がそれぞれ700万円ある場合やマンション管理組合などで積み立てている修繕費は?とか定期預金が2000万円あるけど住宅ローンが1000万円ある場合はペイオフしてくれるのだろうか?など様々なケースがあるのです。無い方が良いに決まっていますが、万が一取引銀行が破綻した想定で預貯金のリスク回避シュミレーションをした方が良いかもしれません。
ログインできない!
大変便利なネットバンクですが、反面では課題を抱えていることは確かです。
ネットバンクは私たち利用者に高度な利便性を提供していますし、今や銀行の経営戦略的にも不可欠な役割を果たしています。しかし、インターネットという環境の中でシステムの安全性を本当に確保できているのでしょうか。
「命の次に大切」下手をすると「命より大切な」と呼ばれるお金に係わることですから、金融取引には顧客との信頼関係が重要です。顧客との接点がテラーではなくインターネットのみに限られるネットバンクにとっては、システムの安全性や安定性を求められます。
世界初のネットバンクであるSFNBが開業した当時は多くの人がインターネット上のセキュリティに対して不安を抱いていました。その後、技術の進歩で「インターネットでお金のやりとりをするのは不安」という顧客心理がある程度は払拭されましたが完全に、とまでは到達していないのが現状です。
具体的なネット上の危険因子を挙げると、システムダウン、なりすまし、ハッカーの侵入などがあります。システムダウンは数年前にも大手銀行で発生したことがあるので、記憶に新しいところです。何らかの理由(天災・人災・故障など)でネットバンクの心臓部であるコンピューターが完全に停止した時に最も深刻な影響をもたらします。
近隣で発生した火災の影響で機能を停止した場合、まずATMがストップします。このことにより日々の生活資金を引き出すことも、期日が迫った支払いもできなくなります。また、会社間の振込みができずに重要な契約が破棄されることもあるでしょう。また、このようなトラブルが発生し損害を被った顧客がどこに責任を負わせるかも問題でプロバイダ、電話会社、金融機関、システムベンダのどこなのかなかなか特定できないのもネットバンク特有の問題なのです。
2000年にイギリスのネットバンク「エッグ」へウェブサイトからの不正侵入が三人の男たちによって試みられ逮捕されました。いわゆるハッカー問題です。幸いにも顧客の資金が動かされませんでしたが、今このときもハッカーが暗躍している可能性もあるのです。
一定のプログラムを集中して短時間に数万回を一つのサイトにアクセスさせて機能を麻痺させるなどの悪質な行為もあります。
「さあ、車の頭金を引き出そう」とネットバンクにログインしようと暗証番号を入れてもネットバンクにアクセスできない。という事が絶対に起きないように最善のセキュリティ対策を行うことがネットバンクの信頼保持と企業存続のポイントなのです。
ネットバンク預金者の相続は?
相続は人の死亡によって起こり、誰もが一生のうちに2回は経験するものです。しかし、事前の準備をしていないと相続が、争う家族の「争族」になってしまいます。我が家は仲が良いから、財産が少ないからと安心するのは危険です。年々、裁判所への相続問題訴訟も増えているのです。ですから遺言を残すことは有効で、自筆証書遺言と公正証書遺言の二つに分類されます。(ただし、ほかにも緊急時の遺言もあります)
自筆証書遺言はその名のとおり自筆で書き残すもので、いつでも自由に書けて内容も何度でも書き換えることができます。しかし、すべて自分の手書きで正確な日付と署名と印がなければ無効になる危険性があります。公正証書遺言は証人2名と公証人、本人とで作成する遺言です。
公的な信頼度は高くなりますが、費用が掛かります。また、被相続人が亡くなると銀行の預貯金口座は凍結され、配偶者でも子供でもお金を動かすことができなくなります。相続が相続人の全員の合意を得たという書類が完成して初めて預金を引き出すことができるのです。では、ネット銀行に預金口座をもっていた人が亡くなったらどうでしょうか。
まずは、ネット銀行のカスタマーズセンターに連絡して相続の手続きを開始する旨を伝えましょう。必要書類を教えてくれるので収集作業からですが、被相続人の出生から逝去までを確認できる範囲の戸籍謄本と除籍謄本・相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、相続に関する書類などでしょう。それらを提出してネット銀行側で確認後、不備や不正がなければ指定口座へ振り込まれます。
そして、代表口座解約計算書を受け取り相続手続きが完了となります。基本的には通常の銀行とさほど変わりません。しかし、注意しなければならない点があります。ネット銀行には通帳が存在しませんので被相続人が誰にも知らせずに預金している場合は相続財産として見つけることができません。つまり、相続人が預金の存在に気が付かないのです。ですから、万が一の事態に備えて遺言などで預金の存在を知らせることが必要なのです。